ああ

駄目だ。
夜が更けるにつれて声がどんどんでかくなる。
もうコンポの音量最大とかそういう次元の音じゃない。

この声一色で俺の頭の中は染まってる。
テレビをどれだけ大音量にしても全くキャスターの声が聞き取れない。

やばいかもしれない。
明日までもつか？

声。
声。

なんか俺を責めてる。
俺が一体何をしたっていうんだ。

悪い事なんて。

そりゃあ俺は自分の都合で女を捨てたり、
結構わがままなやり方をしてきたさ。

でも若い頃なんてみんなそんなもんじゃないか。

俺は悪くない。
俺が特別悪いわけじゃない。
皆だって。

だから悪くない。
俺は。
悪くない。

皆だって。
皆だって悪い事してるじゃないか。

俺は悪くない。
俺は悪くないぞ。

そうだ。
声だ。
この声の女が間違ってるんだ。
そうだ、悪いのはこいつだ。

俺は悪くない。
絶対に。
悪くない。
悪い事なんかしてない。
絶対に。

ああくそ。

声。
声。

否定すればするほどどんどんでかくなる。

頭がおかしくなりそうだ。